令和8年度における雇用保険制度・助成金体系の改正について(パブリックコメント募集中)
令和8年度(2026年度)における雇用保険制度の改革に伴い、各種助成金の要件や支給額を見直す「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案」が、令和8年4月1日から施行される予定です(一部の項目は令和8年5月1日施行予定) 。
目次
Ⅰ.雇用保険法施行規則(昭和50年労働省令第3号)の一部改正関係
1.産業雇用安定助成金
在籍型出向を活用したスキルアップを促進するため、「スキルアップ支援コース」が大幅に見直されます 。
- 助成対象の拡大: 現行は出向元事業主のみが支給対象ですが、改正後は新たに労働者を受け入れた「出向先事業主」も助成対象に追加されます 。
- 助成額の算定: 出向元・出向先それぞれが、契約に基づいて負担した出向中の賃金額に助成率をかけた額が支給されます 。
- 例外規定の設置: 育児休業の取得など、特別な事情により出向復帰後6か月間の全ての月で賃金が支払われない場合の例外措置が新たに規定されます 。
| 項目 | 現行制度 | 改正後の制度(令和8年度〜) |
| 助成対象事業主 | 出向元事業主のみ | 出向元事業主 および 出向先事業主 |
| 助成率(中小) | 2/3 | 2/3 |
| 助成率(大企業) | 1/2 | 1/2 |
| 上限額 | 1人1日あたり8,870円 | 1人1日あたり8,870円 |
| 支給対象期間 | 1か月〜1年間 | 1か月〜1年間 |
2.早期再就職支援等助成金
(1) 中途採用拡大コースの見直し
賃金上昇を伴う中途採用を促進するため、要件の緩和と支給方式の変更が行われます 。
- 要件の緩和: 採用人数要件が「1名以上」に緩和され、中途採用率の目標も「5ポイント以上上昇」または「計画期間中50%以上」のいずれかを選択できるようになります 。
- 賃上げの必須化: 年齢に関わらず、中途採用者全員の賃金を5%以上上昇させることが必須要件となります 。
- 支給方式と加算: 1事業所あたりの定額支給から「採用者1人あたり20万円」の支給に見直されます。また、生産性向上や企業全体の平均賃金上昇等の要件を満たす場合、1人あたり10万円が加算されます 。
- 優遇措置の廃止: 45歳以上の者を対象とした優遇措置(Bコース)は廃止されます 。
| 項目 | 改正前の制度(Aコース) | 改正後の制度 |
| 採用人数 | 2名以上 | 1名以上 |
| 中途採用率要件 | 20ポイント以上上昇 | 5ポイント以上上昇 または 50%以上 |
| 賃金上昇要件 | なし | 全員5%以上上昇(必須) |
| 助成額 | 50万円(1事業所当たり) | 20万円(1人当たり) |
| 加算額 | なし | 10万円(1人当たり) |
(2) UIJターンコースの廃止
利用実績が少ないため、令和7年度限りで廃止されます 。
3.65歳超雇用推進助成金
(1) 65歳超継続雇用促進コースの見直し
高年齢者の雇用推進を段階的に行う事業主を支援するため、支給回数等の制限が撤廃されます 。
- 回数制限の廃止: 「1事業主1回限り」の支給制限が廃止され、段階的に定年引上げ等の措置を講じた場合でも複数回の受給が可能となります 。
- 助成額の増額: 66歳以上の定年引上げ等の措置を実施した場合の助成額が、15万円〜240万円(現行10万円〜160万円)に引き上げられます。継続雇用制度においては、希望者全員を対象とする場合に増額されます 。
- 他社継続雇用: 「他社による継続雇用制度」の導入について、定率助成から16万円〜105万円の「定額助成」に変更されます 。
(2) 高年齢者評価制度等雇用管理改善コースの見直し
助成額が実費ベースの定率から、整備内容に応じた「定額」に変更されます 。
- 能力評価・賃金体系の整備: 中小企業は60万円、大企業は45万円が支給されます 。
- それ以外の整備: 中小企業は30万円、大企業は23万円が支給されます 。
- 機器等の導入: 制度導入に伴い健康診断機器等を導入した場合は、導入費用の60%(大企業45%、上限30万円)が支給されます 。
(3) 高年齢者無期雇用転換コースの見直し
有期契約労働者を無期雇用へ転換した際の助成額が増額されます 。
- 助成額: 1人につき、中小企業は40万円(現行30万円)、大企業は30万円(現行23万円)に変更されます 。
4.特定求職者雇用開発助成金
(1) 特定就職困難者コースの見直し
高齢者の就業状況を踏まえ、対象者の要件が厳格化されます(令和8年5月1日施行予定) 。
- 60歳以上の要件: 公共職業安定所等において、担当者制の職業相談などの「個別支援」を受けていることが新たに要件として追加されます 。
(2) 成長分野等人材確保・育成コースの廃止
実績が低調であることから、令和7年度限りで廃止されます 。
5.地域雇用開発助成金
(1) 地域雇用開発コースの見直し
- 対象労働者の拡大: これまでは助成対象となる雇い入れ人数が全て正規雇用である必要がありましたが、少なくとも1名以上が正規雇用であれば、残りの対象者は非正規雇用であっても助成対象に含めることができるようになります 。
(2) 暫定措置の廃止
- 能登半島地震被災地域特例: 時限的に実施されていた石川県内の被災地域等における上乗せ措置は、令和7年度限り(令和8年3月31日まで)で廃止されます 。
6.両立支援等助成金
(1) 出生時両立支援コース
- 対象拡大: 第2種(育休取得率上昇)の対象事業主が、全業種で「常時雇用する労働者が300人以下」の事業主に統一・拡大されます 。
- 事実婚の明記: 育休取得率の算定に、事実婚状態にある男性労働者の育児休業が含まれることが明文化されます 。
(2) 介護離職防止支援コース
- メニューの整理: 育児・介護休業法で義務化されている「所定外労働の制限」および「深夜業の制限」がメニューから削除されます 。
- 有給介護休暇の独立: 有給の介護休暇制度の導入・利用が独立した類型となり、導入後に利用者が生じた場合に30万円(年10日以上付与の場合は50万円)が支給されます 。
- 有期雇用加算: 利用者が有期雇用労働者の場合、10万円が加算されます 。
(3) 育休中等業務代替支援コース
- 労働者数要件の撤廃・緩和: 業務代替手当の支給に係る「300人以下」の要件が撤廃され、全事業主が対象となります。新規雇用の要件も「300人以下」に緩和されます 。
- 期間と区分の新設: 手当支給の対象期間が上限2年間に延長されます。また、新規雇用において代替期間が「1年以上」の場合の区分が新設され、81万円(プラチナくるみん認定時は99万円)が支給されます 。
(4) 柔軟な働き方選択制度等支援コース
- 障害児等加算: 障害のある子や医療的ケア児を養育する労働者が18歳年度末まで制度を利用できるよう期間を延長した場合、20万円が加算されます 。
- 有給看護休暇の要件変更: 制度の導入だけでなく、実際に「利用した労働者が生じたこと」が支給要件に追加されます 。
7.人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)
高い賃上げによる雇用管理改善を促進するため、新たな加算区分が設けられます 。
- 7%賃上げ区分の新設: 雇用管理改善機器等の導入において、賃金を7%以上増額した場合、助成率が「750/1000(3/4)」に、上限額が225万円に引き上げられます 。
- 困難事業主への緩和: 雇用管理に困難を抱える事業主は、3%以上の賃上げで助成額の加算等の対象となります 。
| 賃上げ割合 | 助成率 | 上限額(機器等導入) |
| なし | 1/2 | 150万円 |
| 5%以上(※) | 625/1000 | 187.5万円 |
| 7%以上 | 750/1000 | 225万円 |
| (※)雇用管理に困難を抱える事業主は3%以上 |
8.キャリアアップ助成金(正社員化コース)
非正規雇用労働者の処遇改善に関する情報の透明性を高めるため、加算措置が新設されます 。
- 情報公表加算の新設: 正社員転換制度の概要や、直近3事業年度の転換実績、転換に要した平均期間などをウェブサイト等で公表した事業主に対し、1人あたり20万円(大企業15万円)が加算されます 。
9.人材開発支援助成金
(1) 人材育成支援コースの拡充
- 中高年齢者実習型訓練: 45歳以上の労働者を対象とした「OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練」が新設されます。2か月以上かつ総訓練時間が425時間以上の訓練が対象です 。
(2) 人への投資促進コースの拡充
- 職務代行支援: 長期教育訓練休暇を取得した労働者の代替業務を行った職員に「職務代行手当」を支払った場合、その手当の75%が助成されます 。
(3) 事業展開等リスキリング支援コースの拡充
- 機器・設備費用の助成: 訓練修了後に事業展開に資する機器・設備を導入し、賃上げ(5%以上等)を行った中小企業に対し、購入費用の1/2(上限150万円)が支給されるメニューが追加されます 。
(4) eラーニング等の上限額変更
- 上限額の適正化: 事業展開等リスキリング支援コースにおけるeラーニング等の上限額が、中小15万円、大企業10万円に見直されます 。
10.地域活性化雇用創造プロジェクト
- 利子補給金の終了: 地域雇用創造利子補給金の支給が令和7年度をもって全て完了するため、根拠規定が削除され制度が終了します 。
Ⅱ.建設労働者の雇用の改善等に関する法律施行規則(昭和51年労働省令第29号)の一部改正関係
1.人材確保等支援助成金(建設分野若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース)
- 一体的取組への上乗せ: 魅力発信から雇用管理研修、入職後の教育訓練までを一体的に実施し、対象者が6か月以上定着した場合、定着した1人あたり42万円が上乗せ支給されます 。
- 賃金助成単価の引上げ: 雇用管理研修等の受講に係る賃金助成が、日額9,500円(賃上げ時は11,500円)に引き上げられます 。
2.人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)
- 助成単価の引上げ: 若年労働者等の育成に係る賃金助成の単価が全面的に引き上げられます 。
- 例:20人以下の事業所で賃上げありの場合、CCUS登録者は12,450円(現行11,405円)、未登録者は11,500円(現行10,550円)となります 。
- CCUS割増の延長: 建設キャリアアップシステム(CCUS)技能者情報登録者に係る賃金助成の割増措置について、期限が令和9年3月31日まで1年間延長されます 。




