【2025年度完全版】男性育休の手続きガイド|新設給付金から助成金まで事業主の対応を徹底解説
「男性従業員から、育児休業を取得したいと初めて相談された」
「2025年4月から始まった新しい給付金について、企業として何をすべきか?」
「法改正の義務や手続きが複雑で、どこから手をつけていいか分からない…」
今や、男性の育児休業は特別なことではなく、企業として適切に対応することが強く求められる時代です。特に2025年4月からは、育児中の従業員を支援する新たな給付金制度がスタートしており、企業の迅速な理解と対応が不可欠です。
対応を誤れば、法違反のリスクだけでなく、従業員のエンゲージメント低下や人材流出にもつながりかねません。
しかし、ご安心ください。この記事では、事業主・人事労務担当者の皆様が、男性従業員の育休に際して「何を」「いつまでに」「どのように」対応すべきかを、完全なステップ・バイ・ステップで解説します。
法的な義務から、社会保険や雇用保険の具体的な手続き、そして企業が活用できる「両立支援等助成金」まで網羅。この記事一本で、男性育休に関する実務上の不安を解消し、従業員が安心して活躍できる職場環境づくりを推進できるようになります。

目次
1. 【事業主の責務】育児・介護休業法で定められた主要な義務
育児・介護休業法は、時代の変化に合わせて改正が重ねられています。事業主として遵守すべき主要な責務を正確に理解しましょう。
◆ 育休を取得しやすい雇用環境の整備
事業主は、以下のいずれかの措置を講じなければなりません。
- 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
- 育児休業・産後パパ育休に関する相談窓口の設置
- 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
- 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と取得促進に関する方針の周知
「相談窓口を設置し、その旨を社内イントラネットやポスターで周知する」といった対応が一般的です。
◆ 【2025年4月開始】妊娠・出産等を申し出た従業員への「個別の周知・意向確認」
従業員本人またはその配偶者が妊娠・出産した旨を申し出た際に、企業はその従業員に対して、個別に以下の内容を周知し、育休取得の意向を確認しなければなりません。
【周知する内容】
- 育児休業・産後パパ育休に関する制度の内容
- 育児休業・産後パパ育休の申し出先
- 育児休業給付、出生時育児休業給付等に関すること
- 従業員が育児休業期間中に負担すべき社会保険料の取り扱い
【周知・意向確認の方法】
- 面談(オンラインも可)
- 書面交付
- FAX
- 電子メールなど
厚生労働省が提供する雛形などを活用し、面談と書面交付を組み合わせて行うのが最も確実です。
◆ 【2025年10月1日〜】育休等の取得に関する「個別の意向聴取」と「業務等に関する配慮」
現行の「意向確認」からさらに踏み込み、従業員の希望する働き方を聴取し、それに応じた配慮を行うことが義務化されます。
- 対象者: 本人または配偶者が妊娠・出産した旨を申し出た従業員
- 聴取すべき意向:
- 育児休業(産後パパ育休含む)の取得希望の有無
- 取得する場合の期間や働き方の希望
- 育児目的のテレワーク、時短勤務、時差出勤などの希望
- 求められる配慮:
- 聴取した意向を尊重し、希望する制度を利用できるよう、業務の配分や人員配置について必要な配慮をしなければなりません。例えば、「育休を取得しやすいように業務の引き継ぎ計画を会社主導で立てる」「時短勤務ができるように担当業務を見直す」といった具体的な対応が求められます。
◆ 育休の申し出を理由とする不利益取扱いの禁止
育休の申し出や取得を理由として、解雇、雇止め、降格、減給、不利益な配置転換などを行うことは、法律で固く禁じられています。
◆ 「産後パパ育休」制度への対応
子の出生後8週間以内に4週間まで取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」は、従来の育休とは別の制度です。申し出期限が原則2週間前と短いこと、分割取得が可能なことなど、制度の違いを理解し、対応できる体制を整える必要があります。
2. 【雇用保険】育休中の生活を支える給付金制度を完全理解する
育休中の従業員の経済的基盤を支える給付金制度が、2025年4月からさらに手厚くなりました。事業主として、これらの制度を正確に理解し、従業員に説明できるようにしておくことが重要です。
① 育児休業給付金(従来の育休に対する給付)
- 対象: 原則1歳未満の子を養育するために「育児休業」を取得する従業員。
- 給付額:
- 休業開始から180日間:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
- 181日目以降:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
② 出生時育児休業給付金(産後パパ育休に対する給付)
- 対象: 子の出生後8週間以内に「産後パパ育休(出生時育児休業)」を取得する男性従業員。
- 給付額: 休業開始時賃金日額 × 休業日数(最大28日) × 67%
- ポイント: 産後パパ育休専用の給付金です。この給付金の日数は、①の育児休業給付金の180日間に通算されます。
③ 【2025年4月開始】出生後休業支援給付金
- 概要: 従来の育児休業給付(67%)に上乗せする形で、休業前賃金の13%相当が支給されます。これにより、社会保険料免除と合わせると「休業前の手取り収入の10割相当」が支援されます。
- 主な支給要件:
- 従業員本人と配偶者が、共に14日以上の育児休業を取得すること。
- 対象期間:男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に開始した育休。
- 給付額: 休業開始時賃金日額 × 休業日数(最大28日) × 13%
④ 【2025年4月開始】育児時短就業給付金
- 概要: 2歳未満の子を養育するために時短勤務を行い、それによって賃金が低下した従業員に対して、低下した賃金の10%相当が支給されます。
- 対象: 2歳未満の子を養育するために時短勤務を行い、賃金が低下した従業員。
- 給付額: 時短勤務中に支払われた賃金額 × 10%
3. 【社会保険】育休中・復帰後の手続きと従業員メリット
社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関しても、事業主が行うべき重要な手続きがあります。これらは従業員の経済的負担を軽減し、将来の年金額を守るための大切な制度です。
① 【育休期間中】社会保険料の免除
- 内容: 育休期間中は、健康保険料と厚生年金保険料の被保険者負担分・事業主負担分ともに免除されます。
- 条件: その月の末日が育児休業期間中である場合に免除されます。また、同月内に14日以上の育休を取得した場合も免除の対象となります。
- 手続き: 事業主が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構に提出します。
- ポイント: 従業員だけでなく、企業の負担も軽減される非常に大きなメリットがあります。保険料は免除されても、将来受け取る年金額が減ることはなく、納付したものとして扱われます。
② 【職場復帰後】育児休業等終了時報酬月額変更届
- 内容: 育休から復帰後、時短勤務などで給与が下がった場合、社会保険料もそれに合わせて引き下げるための手続きです。通常の随時改定(月額変更届)よりも緩やかな条件で改定できます。
- 対象者: 育休を終了し、3歳未満の子を養育する従業員で、復帰後の3ヶ月間の給与平均が、育休前の標準報酬月額と比べて1等級以上差がある場合。
- 手続き: 事業主が「育児休業等終了時報酬月額変更届」を日本年金機構に提出します。
- ポイント: これにより、復帰後の給与水準に合った社会保険料となり、従業員の手取り額の減少を緩和できます。
③ 【将来のため】養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置
- 内容: ②の手続きなどで社会保険料が下がっても、将来の厚生年金額を計算する際には、育児休業前の高い標準報酬月額が保障される特例措置です。
- 手続き: 事業主が「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を日本年金機構に提出します。
- ポイント: この手続きをしないと、時短勤務等で下がった給与に基づいて年金額が計算されてしまい、従業員が将来不利益を被る可能性があります。従業員の将来を守るために、必ず提出が必要な非常に重要な書類です。
4. 【実践フロー】従業員の申出から職場復帰までの手続き完全マップ
実務上の具体的な手続きの流れを時系列で解説します。
STEP1:従業員からの妊娠・出産等の報告と意向確認・聴取(発生時)
従業員から報告を受けたら、速やかに「個別の周知・意向確認」を実施します。
【2025年10月1日以降】 この際に、取得希望の有無だけでなく、働き方の希望などの「個別の意向聴取」も併せて行い、それに応じた配慮(業務調整など)の検討を開始します。
STEP2:「育児休業申出書」の受理と内容確認(休業1ヶ月前まで)
従業員から正式に「育児休業申出書」が提出されます。
- 受理期限: 原則、休業開始予定日の1ヶ月前まで(産後パパ育休は2週間前まで)。
- 確認事項: 休業開始日と終了日、子の情報などに漏れや誤りがないかを確認します。
STEP3:「育児休業取扱通知書」の交付
申出書を受理したら、企業は従業員に対して速やかに「育児休業取扱通知書」を交付します。
STEP4:【社会保険】育休開始時の手続き
- 育児休業等取得者申出書を日本年金機構に提出し、社会保険料の免除手続きを行います。
STEP5:【雇用保険】育休中の手続き
従業員が取得する休業の種類に応じて、適切な給付金の申請手続きをハローワークに対して行います。
- 両親で14日以上の育休を取得した場合: 上記に加え、「出生後休業支援給付金」の申請。
- 産後パパ育休の場合: 「出生時育児休業給付金」の申請。
- 従来の育児休業の場合: 「育児休業給付金」の申請。
STEP6:【職場復帰時】社会保険・雇用保険の手続き
- 育児休業等終了届を日本年金機構に提出します。
- (該当する場合)育児休業等終了時報酬月額変更届を提出し、社会保険料を見直します。
- 養育期間標準報酬月額特例申出書を提出し、将来の年金額を保障します。
- (該当する場合) 育休復帰後に時短勤務をする従業員のために、「育児時短就業給付金」の申請をハローワークに行います。
5. 【重要】企業のメリット!「両立支援等助成金」を活用する
男性育休の取得推進は、企業の義務やコストだけでなく、金銭的なメリットにも繋がります。その代表が「両立支援等助成金」です。
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)とは?
男性従業員が育児休業を取得しやすい職場風土づくりに取り組み、実際に育休を取得させた事業主に支給される助成金です。
主な支給要件と支給額
【支給要件の例】
- 男性が子の出生後8週間以内に開始する連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育休を取得させること。
- 育休取得に関する社内規定を整備し、周知していること。
- 個別の意向確認など、法に定められた義務を果たしていること。 等
【支給額(2025年度)】
- 1人目の取得: 20万円
※支給額や要件は年度により改定されるため、申請前に必ず厚生労働省の最新情報をご確認ください。
助成金を活用するメリット
- 直接的なコスト補填: 育休取得に伴う業務調整などのコストを補填できます。
- 社内体制整備の促進: 助成金の申請準備を通じて、就業規則や相談体制が自然と整備されます。
- 企業の魅力向上: 「子育てサポート企業」として、採用活動における大きなアピールポイントになります。
6. 【社内体制】トラブルを防ぎ、円滑な運用を実現する3つのポイント
手続きをこなすだけでなく、組織として円滑に男性育休を運用するための基盤づくりも重要です。
Point1:就業規則の確認と見直し
育児・介護休業法の内容に沿って、自社の就業規則(育児・介護休業規程)が整備されているかを確認します。「産後パパ育休」や新しい給付金制度に関する情報提供、2025年10月からの配慮義務についても触れておくなど、法改正に対応した内容にアップデートすることが不可欠です。
Point2:管理職への教育と意識改革
現場で最初に従業員の相談を受けるのは、直属の上司です。管理職が制度を正しく理解し、肯定的に対応できるかどうかで、従業員の安心感は大きく変わります。管理職向けの研修を実施し、「部下の育休取得は、チームの業務効率化や多能工化を進める良い機会」といったポジティブな意識を醸成することが重要です。
Point3:パタニティ・ハラスメント(パタハラ)防止措置
育休取得を阻害する言動(「男のくせに育休なんて」「昇進に響くぞ」など)は、パタハラに該当します。事業主には、このパタハラを防止する措置を講じることが義務付けられています。相談窓口の設置と周知、ハラスメント研修の実施などを徹底しましょう。
7. まとめ:男性育休への対応は、企業の未来への投資
男性従業員の育児休業への対応は、もはや単なる労務管理上の一手続きではありません。特に2025年は、新給付金の開始や配慮義務の追加など、企業が対応すべき内容が大きく変化しました。
これらの法改正は、国を挙げて「共働き・共育て」を推進する強いメッセージです。企業がこれらの制度を正しく理解し、従業員に積極的に情報提供・配慮することは、多様な人材が長期的に活躍できる環境を整え、従業員エンゲージメントを高め、社会から選ばれる企業となるための「未来への投資」と言えるでしょう。



