帰化申請の審査が厳格化!許可を得るための対策

近年、日本国籍を取得するための帰化申請は、手続きのデジタル化が進む一方で、審査の内容が著しく厳格化しています。法務局の姿勢は、「単に法的要件を満たすだけでは不十分。証明力の高い資料と、申請者の誠実な姿勢の裏付けが必要」という方向へと明確にシフトしています。

2025年現在、帰化申請を確実かつスムーズに進めるために取るべき対策を解説します。


行政実務で厳しくなった主要な審査ポイント

審査の厳格化は、主に「生計要件」「素行要件」「日本語能力」の3点、および提出書類の整合性に対する要求レベルの向上として現れています。

1. 素行要件の徹底的な監査:健康保険料と交通違反基準の変更

素行要件(日本社会における法令遵守の姿勢)の確認は、国民の義務履行意識を測る上で最も厳しくなっています。

A. 納税・社会保険料の審査強化

従来の審査では、住民税や年金の納付状況が中心でしたが、2023年以降の実務では、新たに「健康保険料の支払い状況」も審査対象に追加されています。会社員で社会保険に加入している場合は給与から天引きされるため心配が少ないものの、無職期間がある方や会社勤めではない方は、国民健康保険料の未納・滞納がないかを確認し、もし未納分があれば申請前に全て支払うことが必須です。

また、たとえすでに完納済みであっても、過去に住民税などの延滞記録があった場合、法務局から「滞納理由の説明」を求められる事例が報告されており、申請者の誠実な説明と再発防止策の裏付けが求められます。

B. 交通違反の基準が劇的に厳格化

交通違反に関する審査基準も大幅に難化しています。

従来の目安では、直近5年間で軽微な違反(駐車違反など)が5回未満であれば許可の可能性がありましたが、2023年以降の厳格化基準では、直近2年間で3回以上の軽微な違反がある場合、不許可となる可能性が非常に高くなっています

さらに、違反歴を隠蔽しようとすることは「虚偽申告」と判断され、許可の決定的な要因となるため、軽微な違反であっても正直に申告し、誠実な態度で反省の有無を説明することが最も重要です。

2. 生計要件の難化:安定性と裏付け資料の要求

帰化申請では、申請後も日本で自立した生活を継続できるか、経済的な安定性が厳しくチェックされます。

A. 収入基準の実務的目安の強化

明確な法的基準はないものの、実務上、単身世帯では年収300万円程度が安定性の目安とされており、扶養家族が増えるごとに要求水準は上昇します。特に、就労期間が短い転職直後非正規雇用のみの場合、経済基盤の安定性について詳細な裏付けを求められる傾向が強まっています。

B. 在留資格期間による門前払いリスク

現在保有している在留資格(ビザ)の在留期間が1年以下の場合、帰化申請が受け付けられなくなったとされています。過去に長期のビザを保有していたとしても、現在のビザの期間で判断されるため、申請は現在の在留資格が3年または5年の期間となってから行うことが強く推奨されます。

3. 面接審査の難化と日本語能力の確認

面接は、申請者の適格性をより深く見極める場として重視されており、形式的な確認に留まりません。

A. 全職歴と在留活動の適合性検証

審査官は、申請者の来日してから現在までのすべての職歴について細かく質問します。過去の職務内容が、その当時保有していた在留資格(例:技術・人文知識・国際業務)の活動範囲に合致していたか、留学生時代の資格外活動許可(週28時間以内)を遵守していたかなど、入管法遵守の履歴にまで深く踏み込みます。

また、申請内容の信憑性を確認するため、過去または現在の職場に対し、電話による裏付け調査が実施されることもあります。

B. 日本語能力の確認と不許可リスク

日常生活に支障のない程度の日本語能力(小学校低学年程度の読み書き能力、日常会話力)が求められます。面談は日本語での質疑応答が基本であり、ここで職業や家族構成、生活設計を説明できるかが問われます。日本語能力が生活レベルに達していないと判断されます。


厳格化時代を乗り切るための戦略的対応

この厳格化の波を乗り越え、許可率を高めるためには、単なる要件充足以上の周到な準備が必要です。

対策1:過去のマイナス要素の「洗浄期間」を確保する

交通違反や滞納歴などのマイナス要素がある場合、申請前にこれを解消し、誠実な姿勢を示す期間を設けることが必須です。軽微な違反がある場合は、最後の違反から3年以上無事故・無違反を維持することが推奨されます。また、滞納歴がある場合は、完納した上で、滞納の経緯と再発防止策を誠実に説明する準備をしておきましょう。

対策2:「追加資料の先出し」戦略で安定性を証明する

法務局が懸念する可能性のある要素(転職直後、非正規雇用、収入の不安定さなど)については、初回申請時から証明力の高い追加資料を添付する「先出し」戦略が有効です。

給与明細や在職証明に加え、貯金通帳のコピーや家族からの生活補助証明などを事前に提出することで、法務局からの追加資料請求を減らし、スムーズな審査につながる可能性があります。

対策3:政策変更リスクに備え、速やかに申請する

行政実務上の厳格化に加え、政府内では、帰化が参政権を伴う点から、居住要件を永住許可と同様の10年以上に延長する案が議論されています。高市総理は外国人政策の基本方針を来年1月までにまとめるよう指示しており、将来的に法的要件が大幅に変更されるリスクがあるため、現行の要件を満たしている場合は、法改正に備える戦略的な行動として、速やかに申請手続きを進めることが最善策となります。


帰化申請の厳格化は、申請者に「日本国民としての倫理的・経済的適格性」を高度に証明するよう求めています。この複雑な手続きを確実に成功させるためには、申請書類の整合性を高め、過去の履歴に対する懸念点を論理的に解消し、万全の体制で臨むことが不可欠です。専門家である行政書士を活用し、リスク管理を行うことが、厳格化時代における許可への最も確実な道筋と言えるでしょう。