フリーランス新法にについて

フリーランス新法とは? 知っておきたい基本と発注者の義務・禁止事項

フリーランスとして働く方、あるいはフリーランスに業務を委託する事業者の皆さん、2024年秋に施行される「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(通称:フリーランス新法)をご存知でしょうか?この法律は、フリーランスの皆さんが安心して働ける環境を整備し、取引の適正化を図ることを目的としています。

この記事では、フリーランス新法の基本から、特に発注事業者が知っておくべき義務と禁止行為について、ソースに基づいて詳しく解説します。

フリーランス新法ができた目的は何?

この法律は、特定受託事業者(主にフリーランス)に係る取引の適正化と、特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、国民経済の健全な発展に寄与することを目的にしています。フリーランスという働き方が広がる中で、発注事業者とフリーランスの間で起こりうる様々なトラブルを防ぎ、立場の弱いフリーランスを守るための法律と言えるでしょう。

この法律の「対象者」は?

この法律が適用されるのは、「業務委託事業者」と「特定受託事業者(フリーランス)」の間の取引です。

  • 特定受託事業者(フリーランス):
    • 従業員を使用しない個人。
    • 代表者以外に他の役員がおらず、かつ従業員を使用しない法人。
    • つまり、一人で事業を行っている個人事業主や、一人社長の法人がこれに該当します。
    • 複数の事業を営んでいる場合、一部の事業で従業員を使用していても、他の事業で従業員を使用していない場合でも、事業者全体として従業員を使用していれば「特定受託事業者」には該当しません。
    • 他の事業者から労働契約に基づいて雇用されている労働者が、副業として業務委託を受ける場合は、「特定受託事業者」に該当し得ます。
    • 「派遣労働者」を受け入れている場合は、「従業員を使用」しているに該当する場合があります。従業員の有無は、個別の業務委託や事業ごとではなく、事業者全体として判断されます。
  • 業務委託事業者:
    • 特定受託事業者に対して業務委託をする事業者全般を指します。
    • 従業員を使用する個人、または役員が2名以上いるか従業員を使用する法人は「特定業務委託事業者」と呼ばれ、この法律上の多くの義務や禁止行為の対象となります。
    • 発注事業者がフリーランス(特定受託事業者)である場合も、取引条件の明示義務などの一部の義務が課されます。
    • 業務委託の時点で、発注事業者が従業員を使用しておらず特定業務委託事業者に該当しない場合、その後従業員を使用するようになっても、その業務委託について特定業務委託事業者としての義務は負いません。ただし、従業員を使用していない業務委託事業者であっても、明示義務は負います。

どんな「業務委託」が対象?

この法律が対象とする「業務委託」は、事業者がその事業のために他の事業者に以下の行為を委託することです。

  • 物品の製造(加工を含む): 仕様や内容を指定して物品を作らせたり、加工させたりすることです。例えば、商品の規格やデザインを指定して製造を依頼する場合などです。既製品を購入することは原則として含まれませんが、既製品の一部に加工を依頼する場合は含まれます。
  • 情報成果物の作成:
    • プログラム(ゲームソフト、顧客管理システムなど)。
    • 映像・音声などから構成されるもの(テレビ番組、映画、アニメーションなど)。
    • 文字・図形・記号などから構成されるもの(設計図、デザイン、漫画など)。
  • 役務の提供:
    • 運送、コンサルタント、営業、演奏、セラピーなど、労務やサービスを提供してもらうこと。
    • 物品の修理も含まれます。
    • 建設業法における建設工事も含まれます(下請法とは異なる点)。
    • 発注事業者が自ら使用する役務の提供をフリーランスに委託する場合も対象となります(下請法とは異なる点)。

逆に、単に既存の物品(車や空きスペースなど)を借りるような行為は、仕様等を指定して製造や提供を依頼しているわけではないため、この法律上の「業務委託」には該当しません。

発注事業者の主な「義務」とは?

フリーランス新法では、発注事業者にいくつかの重要な義務が課されています。

1. 取引条件の明示義務(第3条)

業務委託をした場合は、直ちに、取引の条件を明示しなければなりません。これは、お互いの認識の相違を減らし、トラブルを防ぐための基本的なことです。

  • 明示の方法:
    • 書面または電磁的方法(電子メール、SNSメッセージ、チャットツールなど)が認められます。どちらの方法を選ぶかは発注事業者が選択できます。
    • 電磁的方法で明示した場合でも、フリーランスから書面の交付を求められた場合は、遅滞なく交付する必要があります。ただし、フリーランスの保護に支障がない場合は不要とされる場合もあります。
  • 明示すべき事項:
    • 業務委託事業者および特定受託事業者の名称(商号、氏名、識別できる記号など)。
    • 業務委託をした日
    • フリーランスにお願いする給付の内容(品目、品種、数量、規格、仕様など)。フリーランスの知的財産権が発生する場合、その譲渡・許諾の範囲も明確に記載が必要です。
    • 給付を受領または役務の提供を受ける期日(いつまでに納品・作業するか)。
    • 給付を受領または役務の提供を受ける場所(どこに納品・作業するか)。
    • 給付の内容について検査する場合、検査を完了する期日
    • 報酬の額および支払期日。具体的な金額が難しい場合は算定方法でも可能ですが、算定方法から具体的な額が自動的に確定する必要があります。支払期日は、具体的な支払日を特定する必要があります。
    • 現金以外の方法で報酬を支払う場合、その支払方法に関する事項。手形、一括決済方式、電子記録債権、資金移動業者の口座への資金移動などが該当し、それぞれ記載事項が決まっています。
  • 算定方法や未定事項、共通事項の扱い:
    • 報酬額の算定方法を明示する場合は、単価表などを引用する際は参照元を明示し、具体的な金額確定後には速やかにその金額を明示する必要があります。
    • 正当な理由で委託時に内容が定まらない未定事項がある場合、その理由と決まる予定日を当初明示し、決まり次第直ちに関連付けをして補充明示する必要があります。
    • 個々の発注に共通して適用される事項(支払方法や検査期間など)がある場合は、あらかじめ共通事項と有効期間を明示しておけば、個別の発注時には参照元を示すことで明示を省略できます。
  • 下請法との関係:
    • 本法と下請法の両方が適用される場合、同一の書面や電子メール等に両法の記載事項を併せて一括で示すことが可能です。ただし、電磁的方法の場合は下請法の規制(事前の承諾、書面出力可能な方法)にも留意が必要です。
  • 施行日前の契約:
    • 本法の施行日後に行われた業務委託が対象です。施行日前の契約については、原則として明示義務はありません。ただし、施行日後に契約が更新(自動更新含む)された場合は、新たな業務委託とみなされ、明示義務が発生します。

2. 報酬の支払期日義務(第4条)

特定業務委託事業者(従業員を使用する個人または役員2名以上・従業員を使用する法人)は、フリーランスからの給付を受領した日または役務の提供を受けた日から60日以内で、かつ、できる限り短い期間内に報酬の支払期日を定めなければなりません。支払期日が定められなかった場合は、給付を受領した日または役務の提供を受けた日から60日を経過する日が支払期日とみなされます。

  • 再委託の場合の特例:
    • 元請けから業務委託を受けた事業者が、その業務の一部または全部をフリーランスに再委託した場合、報酬の支払期日は元請けからの支払期日から30日以内で、かつ、可能な限り短い期間内に定める必要があります。
    • 元請けから前払金の支払いを受けた場合、フリーランスが業務着手に必要な費用(資材調達費など)を前払い金として受け取れるよう、適切な配慮をする必要があります。フリーランスのみが費用を要する場合は、元請けからの前払金全額を支払うことが望ましいとされています。

3. 募集情報の的確表示義務(第12条)

特定業務委託事業者(従業員を使用する個人または役員2名以上・従業員を使用する法人)は、フリーランスの募集情報を広告等(新聞、雑誌、Webサイト、メール、SNSメッセージなど)で提供する際、以下の点を守る必要があります。

  • 虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならない。
    • 法違反となる例:実際の事業者と異なる名称で募集する、実際の報酬額より高額に表示する。
    • 応募後に合意に基づいて条件変更するのは法違反にはなりません。
  • 正確かつ最新の内容に保たなければならない。
    • 募集を終了・内容変更したら速やかに情報を更新するなどの措置が必要です。
  • 明示すべき事項: 業務内容、業務に従事する場所・期間・時間、報酬、契約解除に関する事項、募集を行う者の氏名または名称等(氏名/名称、住所/所在地、連絡先、業務内容、場所、報酬)。
  • 対象となる募集: 広告等により広く勧誘する場合や、1つの業務委託に関して2人以上の複数人を相手に打診する場合が含まれます。特定の1人への個別の打診は通常対象外です。
  • 他の事業者に募集を委託した場合も対象となり、虚偽表示等を認識した場合は訂正依頼等が必要です。

4. 育児介護等との両立に対する配慮義務(第13条)

特定業務委託事業者は、フリーランス(特定受託事業者)からの申出に応じて、育児や介護と業務を両立できるよう必要な配慮をする必要があります。

  • 対象となる業務委託:
    • 継続的業務委託(契約期間が6ヶ月以上のもの。更新により6ヶ月以上となる場合を含む)の場合:義務
    • それ以外の業務委託の場合:努力義務
  • 必要な配慮の内容: 個々のフリーランスの状況に応じて、業務の内容や実施体制に照らして可能な範囲で調整を行います。例えば、オンライン就業への切り替え調整、納期変更などがあります。
  • 配慮できない場合: 業務の性質等からやむを得ず配慮ができない場合は、フリーランスにその旨を伝え、理由を分かりやすく説明する必要があります。
  • 申出を阻害する行為の禁止: 申出の手続きを煩雑にしたり、申出をためらわせる言動をしたりすることは望ましくありません。
  • 申出や配慮を理由とした不利益取扱いの禁止: 申出をしたことや配慮を受けたことのみを理由として、契約解除、報酬減額、取引数量削減、取引停止などの不利益な取扱いをすることは禁止されています。
    • 業務時間の短縮に伴う業務量減少分に応じた報酬減額など、申出や配慮との間に因果関係がない場合は、不利益取扱いに該当しない場合があります。

5. ハラスメント対策義務(第14条)

特定業務委託事業者は、フリーランス(特定受託業務従事者)に対するハラスメント(セクハラ、マタハラ、パワハラ)を防止し、相談に応じるための体制整備などの必要な措置を講じなければなりません。

  • 対象となるハラスメント:
    • セクシュアルハラスメント: 性的な言動により不利益を与えたり、就業環境を害すること。
    • 妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ): 妊娠・出産等に関する言動により就業環境を害すること、または配慮の申出等に関する言動により就業環境を害すること。
    • パワーハラスメント: 取引上の優越的な関係を背景とした、業務遂行上必要かつ相当な範囲を超えた言動により就業環境を害すること。殴打、ひどい暴言、過大な要求、過小な要求などが例として挙げられています。
  • 講ずべき措置:
    • ハラスメントを行ってはならないという方針を明確化し、担当者等に周知・啓発すること。
    • 相談窓口を設置し、フリーランスに周知すること。相談には幅広く対応し、相談者・行為者のプライバシーを保護すること。
    • 相談したことなどを理由とした不利益な取扱いをしないことを定め、周知・啓発すること。
    • 事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止策を講じること。
    • 他の事業者等からのハラスメントについても、相談対応や元委託事業者との連携など、必要な対応に努めることが望ましいとされています。

6. 継続的業務委託の契約解除等の事前予告義務(第16条)

特定業務委託事業者(従業員を使用する個人または役員2名以上・従業員を使用する法人)が、継続的業務委託(契約期間が6ヶ月以上のもの)の契約を解除したり、期間満了後に更新しない場合は、フリーランスに対し、少なくとも30日前までにその旨を予告しなければなりません。

  • 予告方法: 書面の交付、FAX、またはフリーランスが書面出力できる電子メール等で行います。
  • 予告義務の例外: 災害等のやむを得ない事由、再委託契約の解除に伴い業務の大部分が不要になった場合、契約期間が30日以下のもの、そしてフリーランスの責めに帰すべき事由により直ちに契約解除が必要な場合は、予告義務は適用されません。
  • フリーランスの責めに帰すべき事由: これは個別の事案ごとに判断されます。例えば、破産や差し押さえで業務遂行に重大な支障が出る場合、反社会的勢力との関係が発覚した場合、業務に関連して第三者に損害を与える行為をした場合、経歴詐称、業務の重要な部分を合理的理由なく行わない場合、契約違反を是正しない場合などが該当し得る例として挙げられています。
  • 契約解除理由の開示: 事前予告を受けたフリーランスから契約解除理由の開示請求があった場合、発注事業者は遅滞なく開示しなければなりません。ただし、第三者の利益を害する場合などは開示されないこともあります。

発注事業者の「禁止行為」とは?

フリーランス新法では、発注事業者がフリーランスに対して行ってはならない7つの禁止行為が定められています。たとえフリーランスの了解を得たり、合意があったりしても、これらの行為は本法に違反することになるため注意が必要です。

  1. 受領拒否(不当な受け取り拒否): フリーランスに責任がないのに、委託した物品や情報成果物の受け取りを拒むこと。発注事業者の都合による一方的な発注取消しや、納期を延期して定めた納期に受け取らないことも含まれます。例:売れ行き不振を理由にアクセサリーの受け取りを拒否、取引先の仕様変更を理由にプログラムの受け取りを拒否、アニメの放送中止を理由に原画を受け取らない。
  2. 報酬の減額(不当な減額): フリーランスに責任がないのに、委託時に定めた報酬額を後から減らして支払うこと。業績悪化、協賛金徴収、原材料価格下落など、名目や方法にかかわらず、あらゆる減額行為が禁止されます。例:業績悪化を理由にデザイン料を減額、単価引下げ合意前に委託した部品に新しい単価を遡及適用、「協力金」名目で報酬から差し引き、振込手数料を報酬から差し引き。共通の算定方法変更により報酬額が引き下がることは、その後の委託であれば減額に該当しませんが、買いたたきに該当する可能性もあります。
  3. 返品(不当な返品): フリーランスに責任がないのに、委託した物品や情報成果物を受領後に引き取らせること。ただし、不良品などの場合は受領後6ヶ月以内であれば返品が認められます。例:イベント終了後の売れ残りを理由にブーケを引き取らせる、納品後の広告中止を理由にイラストを返品。
  4. 買いたたき(著しく低い報酬の設定): 委託する物品等に対し、通常支払われる対価に比べ著しく低い報酬額を不当に定めること。報酬額はフリーランスとしっかり協議して定めることが重要です。判断にあたっては、対価の決定方法、決定内容、通常支払われる対価との乖離、原材料価格などが考慮されます。例:十分な協議なく一方的に単価を決定し、通常対価を大幅に下回る額を設定、納期短縮にもかかわらず当初見積額に据え置き、通常対価を大幅に下回る額を設定。
  5. 購入・利用強制(不当な購入・利用の強制): 正当な理由がないのに、指定する物や役務を強制して購入・利用させること。発注事業者に強制の認識がなくても、事実上フリーランスに購入等を余儀なくさせていると認められる場合も該当し得ます。例:イベント司会者に対し、式場で提供する料理やケーキ等の購入を要請・購入させる、カメラマンに対し、関連会社制作の映画チケット購入を強制。
  6. 不当な経済上の利益の提供要請: 発注事業者が自己のために、フリーランスに金銭、役務、その他の経済上の利益を提供させること。報酬支払いとは別に、フリーランスの直接の利益にならない金銭や作業の提供を要請する場合が対象です。例:委託内容に含まれない荷積み作業を無償で行わせる、採用しなかった楽曲の知的財産権を無償で譲渡させる。
  7. 不当な給付内容の変更・やり直し: フリーランスに責任がないのに、費用を負担せずに、給付内容を変更させたり、受領後にやり直しをさせたりすること。発注側の都合で発注を取り消したりやり直しをさせる場合は、フリーランスが作業に要した費用をしっかり負担する必要があります。例:受領後のプログラムを恣意的に厳しい検査基準で不合格にし、無償でやり直しをさせる、受領後の台本を取引先の意向で修正させたが、追加費用を支払わない、イベント中止を理由に料理の企画・調理委託を取り消したが、シェフが支出した費用を負担しない。

法律に違反した場合どうなる?

この法律に違反した場合、公正取引委員会、中小企業庁長官、厚生労働大臣が、業務委託事業者に対し指導助言を行います。

義務違反や禁止行為が認められる場合、担当省庁は勧告をすることができます。勧告に従わない場合、命令が出されることがあります。

さらに、命令違反や、報告をしない・虚偽報告をする、検査を拒む・妨げるなどの行為には、罰金過料が科されることがあります。法人の業務に関する違反行為は、行為者だけでなく法人にも罰則が科されます。

特定受託事業者(フリーランス)は、この法律に違反する事実がある場合、公正取引委員会や中小企業庁長官、厚生労働大臣に申出をして、適切な措置をとるよう求めることができます。国はフリーランスからの相談に応じる体制を整備します。

まとめ

フリーランス新法は、フリーランスの働き方を守り、取引の透明性と公正性を高めるための重要な法律です。発注事業者は、取引条件の明示、支払期日の遵守、募集情報の適正な表示、育児介護等への配慮、ハラスメント対策、契約解除の事前予告といった義務を果たす必要があります。また、不当な受領拒否、報酬減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しといった禁止行為を行わないことが求められます。

この法律を正しく理解し、適切な取引慣行を確立することは、フリーランスとの良好な関係を築き、ビジネスを円滑に進める上で非常に重要です。施行に向けて、ご自身の取引が法律に適合しているか、改めて確認しておくことをお勧めします。