失業手当、手厚い給付を受けられる「特定受給資格者」と「特定理由離職者」とは?
転職活動中や退職を考えている皆さん、失業手当(基本手当)について調べていて「特定受給資格者」や「特定理由離職者」という言葉を目にしたことはありませんか?これらの区分は、失業手当の給付日数や支給開始時期に大きな影響を与える重要なものです。
目次
失業手当(基本手当)とは?
まず、雇用保険の基本手当とは、雇用保険の被保険者の方が、定年、倒産、契約期間の満了などにより離職し、失業中の生活の心配なく新しい仕事を探し、一日も早く再就職できるよう支給されるものです。
この基本手当の所定給付日数(支給を受けられる日数)は、離職時の年齢、雇用保険の被保険者であった期間、そして離職の理由などによって90日から360日の間で決定されます。特に、倒産や解雇など、やむを得ない事情で離職した方は、一般の離職者に比べて手厚い給付を受けられる場合があります。

「特定受給資格者」とは?
特定受給資格者とは、会社の倒産や解雇など、会社都合によって再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた人を指します。
特定受給資格者に該当する主な離職理由
特定受給資格者に該当する離職理由は多岐にわたります。主な例は以下の通りです:
- 倒産:会社が倒産・廃止・事業活動を休止し、再開が見込めない場合。
- 解雇:懲戒解雇以外の解雇。
- 大量雇用変動:事業所で1ヶ月以内に30人以上の失業者が出た場合、または雇用保険被保険者の3分の1以上が離職した場合。
- 労働条件の重大な違い:労働契約締結時の労働条件と実際の条件が著しく異なる場合。
- 賃金の滞納・著しい低下:賃金が支払われなかったり、著しく低下したりした場合。
- 長時間残業:離職の直前6ヶ月のうち、いずれか3ヶ月で45時間を超える残業、または1ヶ月で100時間を超える残業、または連続2ヶ月で80時間を超える残業があった場合。
- ハラスメント:上司や同僚からの故意の排斥、嫌がらせ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントなどがあり、事業主が必要な措置を講じなかった場合。
- 退職勧奨:雇用主から直接的または間接的に退職を勧められた場合(早期退職優遇制度に応募した場合は該当しない)。
特定受給資格者のメリット
特定受給資格者に認定されると、一般の離職者と比較して以下のようなメリットがあります:
- 失業手当の受給条件が緩和される。
- 所定給付日数が優遇される:一般の自己都合退職者よりも長く支給され、最長330日になる場合があります。
- 給付制限がない:通常、自己都合退職では7日間の待期期間後に2~3ヶ月の給付制限期間がありますが、特定受給資格者は7日間の待期期間のみで支給が開始されます。
「特定理由離職者」とは?
特定理由離職者とは、特定受給資格者以外の離職者で、期間の定めのある労働契約が更新されなかった場合や、病気、介護、通勤困難など、正当な理由によって自己都合退職をした人を指します。やむを得ない事情で退職した人に分類されますが、通常の自己都合退職者よりも優遇された失業給付を受けられるのが特徴です。
特定理由離職者に該当する主な離職理由
特定理由離職者に該当するケースは、「雇止め」と「正当な理由のある自己都合退職」に分けられます。
- 雇止めにあった人
- 有期労働契約が満了し、更新を希望したにもかかわらず、継続して労働契約が更新されなかった場合。ただし、3年以上継続して雇用された場合の契約更新なし、または契約更新が明示されていたのに更新されなかった場合は、特定受給資格者に該当します。
- 正当な理由で自己都合退職をした人
- 体力不足・心身の障害・病気・けが:肉体疲労、心身の障害、病気、けが、視覚、聴覚、触覚の低下などが原因で離職した場合。
- 妊娠・出産・育児:妊娠、出産、育児等により離職し、基本手当の受給期間延長措置を受けた場合。
- 家族の介護・扶養:死亡・疾病・傷害等で父母や親族を扶養・介護するために離職を余儀なくされた場合。
- 配偶者や親族との別居困難:配偶者や扶養親族と別居することが困難になったため離職した場合。
- 通勤困難:結婚による住所変更、育児に伴う保育所などの利用、オフィス移転、自身の意思に反する住所移転、交通機関の廃止・運行時間変更、事業主の指示による異動に伴う別居回避、配偶者の転勤などにより通勤が不可能または困難になった場合。
- 希望退職の申請:会社の改革や人員整理に伴う希望退職に応じた場合。
特定理由離職者のメリット
特定理由離職者に認定されると、以下のメリットがあります:
- 失業手当の支給条件が有利になる。
- 給付制限がない:特定受給資格者と同様に、7日間の待期期間のみで支給が開始されます。
- 所定給付日数が一部優遇される:一般の自己都合退職者よりも給付日数が長くなる場合があります。特に「特定理由離職者の範囲」の1に該当する方で、離職日が平成21年3月31日から令和9年3月31日までの間にある場合は、特定受給資格者と同様の給付日数となります。
特定受給資格者と特定理由離職者の違い
両者の主な違いをまとめると以下のようになります:
| 比較項目 | 特定受給資格者 | 特定理由離職者 |
|---|---|---|
| 主な離職理由 | 会社都合(倒産、解雇など) | 正当な理由がある自己都合(契約期間満了、病気、介護、通勤困難など) |
| 区分 | 会社都合退職 | 自己都合退職扱い(やむを得ない理由あり) |
| 失業手当の支給開始 | 7日間の待期のみ(給付制限なし) | 7日間の待期のみ(給付制限なし) |
| 給付日数の優遇 | 通常の自己都合退職者より長く支給される(より手厚い) | 一部自己都合退職者より優遇される |
| 必要な証明書類 | 離職票や事業主の証明(通常会社からの記載でOK) | 医師の診断書や通勤困難の証明など、自分で提出が必要な場合あり |
| ハローワークでの扱い | 「正当な会社都合」として扱われることが多い | 「正当な理由のある自己都合」として扱われる |
どちらも7日間の待期期間後すぐに失業手当が支給される点は共通していますが、離職理由が「会社都合」か「正当な理由がある自己都合」かが最も大きな違いです。また、特定理由離職者の場合は、そのやむを得ない理由を証明するための書類を自分で用意する必要がある点が、特定受給資格者と異なります。
ご自身が特定受給資格者か特定理由離職者にあたるかどうかの判断に迷った際は、厚生労働省から発出されている「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」のパンフレットをご確認ください。
給付日数について
雇用保険の基本手当の所定給付日数は、離職時の年齢、被保険者期間、離職理由によって90日から360日の間で決定されます。
- 特定受給資格者:一般の離職者に比べ、手厚い給付日数が設定されています。
- 特定理由離職者:こちらも一般の離職者に比べ、給付日数が優遇される場合があります。特に「特定理由離職者の範囲」の1に該当する方で、離職の日が平成21年3月31日から令和9年3月31日までの間にある場合は、特定受給資格者と同様の所定給付日数となります。
具体的な給付日数は、個々の状況(離職理由、離職時の年齢、雇用保険の被保険者であった期間など)によって異なりますので、ハローワークで確認することが重要です。
公共職業訓練等を受講する場合の優遇
再就職のためにハローワークから公共職業訓練等の受講を指示された場合、所定給付日数が終了しても、訓練が終了する日まで引き続き基本手当が支給されることがあります。さらに、訓練受講にかかる費用として「受講手当」や「通所手当」なども支給されるため、積極的に活用を検討しましょう。
失業手当の申請手続きと必要書類
失業手当を受給するためには、以下の手続きと書類が必要です。
- 離職票の受け取り:会社から離職票が交付されます。
- ハローワークでの求職申込みと書類提出:住所を管轄するハローワークに行き、求職の申込みを行い、「雇用保険被保険者離職票(−1、2)」などを提出します。
- 必要書類の準備:
- 離職票
- 顔写真(マイナンバーカードを提示する場合は不要)
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、個人番号がある住民票の写しなど)
- 身元確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 本人名義の預金通帳・キャッシュカード
- 特定理由離職者の追加書類:特定理由離職者として認定されるには、離職理由が正当であることを示す書類が必要です。例えば、病気による離職の場合はハローワークが指定する様式で医師の診断書、介護の場合は介護対象者の診断書、通勤困難の場合は住民票の写しや通勤経路の説明資料、契約非更新の場合は雇用契約書と更新希望を出した証拠などが必要です。これらの書類は自分で用意する必要があり、手続きに手間がかかる場合があります。
- 待期期間:求職の申込み後、7日間の待期期間があります。
- 雇用保険受給者初回説明会への参加。
- 求職活動の実績:認定対象期間中に原則として2回以上の求職活動が必要です。
- 失業の認定。
- 失業手当の受給。
注意点:失業手当を受けるためには、「就職しようとする積極的な意思と、いつでも就職できる能力がある」失業の状態にあることが要件です。病気やけがで就職できない状態にある場合は、基本手当を受けられないことがあります。また、虚偽の申告による不正受給は厳しく罰せられますので、正確な情報で申請を行いましょう。
まとめ
特定受給資格者と特定理由離職者は、失業手当の給付において一般の離職者よりも有利な扱いを受けることができる重要な区分です。
- 特定受給資格者:倒産や解雇など、会社都合で離職した方。給付日数や受給条件が最も手厚く優遇されます。
- 特定理由離職者:契約期間満了(雇止め)や、病気、介護、通勤困難などの正当な理由がある自己都合で離職した方。給付制限がなく、給付日も優遇される場合があります。
ご自身の離職理由がどちらに該当するのかあいまいな場合は、ハローワークや都道府県労働局など、居住地を管轄する公的機関に一度相談することをおすすめします。




