【再掲】日本の年金制度、未来に向けてどう変わる?2025年年金制度改正の全体像を解説
皆さん、こんにちは!私たちの老後の生活を支える大切な年金制度が、社会の変化に対応するため大きく改正されます。今回の改正は、働き方や生き方の多様化に対応し、現在の受給者と将来の受給者の双方にとって、老後の生活の安定と所得保障の機能を強化することを目的としています。
「年金って難しそう…」と感じる方もいるかもしれませんが、今回の改正は私たちの働き方や将来の年金額に直結する重要な内容ばかりです。この記事では、今回の年金制度改正のポイントを分かりやすくご紹介します。

目次
1. 働き方に合わせた社会保険の加入対象の拡大
より多くの人が社会保険(厚生年金・健康保険)に加入できるよう、要件がシンプルになります。これにより、将来の年金受給額を増やしたり、医療保険からの保障(傷病手当金・出産手当金など)を受けられる方が増えるメリットがあります。
- 短時間労働者の加入要件の見直し:
- 「年収106万円の壁」の撤廃:いわゆる「年収の壁」として意識されてきた月額賃金8.8万円(年収106万円)以上の要件が撤廃されます。これは、全国の最低賃金の引き上げ状況を見極めて、公布から3年以内の政令で定める日から廃止される予定です。
- 企業規模要件の段階的撤廃:働く企業の規模にかかわらず社会保険に加入できるようになります。従業員数が少ない企業(36~50人、21~35人、11~20人、1~10人)も、2027年10月から2035年10月にかけて段階的に対象が拡大されます。
- 新たな加入者への支援:企業規模要件の見直しなどにより新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者に対しては、3年間、事業主が保険料を多く負担することで、労働者本人の保険料負担を軽減する特例措置が実施されます。この事業主の追加負担分は、国が全額支援します。
- 個人事業所の適用対象の拡大:
- 現在、一部の業種を除き適用対象外だった常時5人以上の従業員を使用する個人事業所が、原則としてすべての業種で社会保険の適用対象となります。ただし、2029年10月の施行時点で既に存在している事業所は、当分の間は対象外です。

2. 在職老齢年金制度の見直しで高齢者の働き方を後押し
年金を受給しながら働く高齢者が、年金を減額されにくくなり、より多く働けるように見直されます。
- 支給停止基準額の引き上げ:賃金と老齢厚生年金の合計が一定額を超えると年金が減額される「在職老齢年金制度」において、支給停止の基準額が現在の月50万円から月62万円に引き上げられます。この変更は、2026年4月から施行されます。
- 見直しの効果:この改正により、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになると見込まれています。これにより、高齢者の働き控えを緩和し、人手不足の解消にもつながることが期待されています。

3. 遺族年金の見直しで多様な家族構成に対応
遺族年金は、女性の就業率向上や共働き世帯の増加といった社会状況の変化に合わせて、男女差を解消し、より実態に即した制度になります。
- 遺族厚生年金の見直し:
- 男女差の解消:これまで男性には給付がなかったり、制限が厳しかったりした部分が是正されます。18歳未満の子がいない20代から50代の配偶者については、原則として5年間の有期給付となりますが、男性も新たに給付対象となります。男性への適用は2028年4月から、女性への段階的適用は2028年4月から20年かけて行われます。
- 手厚い配慮措置:この有期給付には有期給付加算が上乗せされ、年金額が現在の約1.3倍に増額されます。また、収入要件(年収850万円未満)が廃止され、年金分割による増額も可能になります。さらに、障害状態にある方や収入が十分でない方は、5年経過後も給付を継続できるようになります(最長65歳まで)。
- 変更のない対象者:すでに遺族厚生年金を受給している方、60歳以降に受給権が発生する方、2028年度に40歳以上になる女性、18歳年度末までの子を養育している方などは、原則として現行制度のままです。
- 中高齢寡婦加算の見直し:中高齢寡婦加算は、2028年4月以降に新規に受給権が発生する方については、25年かけて段階的に縮小・廃止されます。しかし、一度受け取り始めた加算額は、65歳になるまで額は変わりません。
- 遺族基礎年金の見直し:
- こどもが受け取りやすく:親(父または母)と生計を同じくしていても、親が遺族基礎年金を受け取れない場合(例えば、親が再婚した場合、親の収入が850万円を超えている場合、離婚した元配偶者が子を引き取る場合など)に、こどもが遺族基礎年金を受け取れるようになります。これは、こどもが自身の選択によらない事情に左右されることなく年金を受給できるようにするための見直しであり、2028年4月から施行されます。

4. 保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
賃上げが進む中で、賃金が高い方も、より賃金に見合った保険料を負担し、それに応じた年金を受け取れるように変わります。
- 標準報酬月額の上限引き上げ:厚生年金保険の保険料や年金額の計算に使われる賃金(標準報酬月額)の上限が、月65万円から月75万円に段階的に引き上げられます。
- 2027年9月からは68万円に。
- 2028年9月からは71万円に。
- 2029年9月からは75万円に。
- 見直しの効果:現在、賃金が月65万円を超える方は、実際の賃金に対する保険料の割合が低く、賃金に見合った年金を受け取ることができていませんでした。この引き上げにより、該当する方の保険料は増加しますが、将来受け取る年金額も増加します。また、厚生年金制度全体の財政改善にもつながり、全体の給付水準が底上げされます。
5. その他の見直しポイント
- 子の加算の充実:年金を受給しながらこどもを育てている方への加算額が充実します。1人あたりの加算額は年額281,700円に引き上げられ(現在の第1・2子の234,800円、第3子以降の78,300円から一律に)、老齢基礎年金のみを受給している方など、対象となる年金の種類も拡大されます。これは2028年4月から施行され、現在受給している方も対象です。
- 配偶者の加算の見直し:女性の社会進出や共働き世帯の増加を踏まえ、年下の配偶者を扶養している場合に支給される老齢厚生年金の配偶者加給年金が見直され、新しく受給する方については年額367,200円に減額されます(現行は408,100円)。ただし、既に受給している方の加算額は変更ありません。
- 脱退一時金の見直し:日本への滞在期間が短い外国人に支給される脱退一時金について、再入国許可付きで出国した外国人には、許可の有効期間内は支給しないこととなります。また、支給上限期間が5年から8年に延長される予定です。
- 私的年金制度の拡充:
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢上限の引き上げ:働き方にかかわらず、70歳になるまでiDeCoに加入し、老後の資産形成を継続できるようになります。これは公布から3年以内の政令で定める日から施行されます。
- 企業型DC(企業型確定拠出年金)の拠出限度額の拡充:事業主の拠出に上乗せして拠出できる加入者掛金(マッチング拠出)の制限(事業主掛金の額を超えられない)が撤廃されます。
- 企業年金の運用の見える化:厚生労働省が企業年金の運営状況の情報をとりまとめて公表することで、運用改善を促進します。
- 将来の基礎年金の水準:政府は、社会経済情勢の変化を見極め、次の財政検証(2029年予定)後に、基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合に、基礎年金の給付水準を向上させるための必要な措置を検討します。また、厚生年金の報酬比例部分の年金額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」は、2030年度まで継続されますが、受給者に不利にならないよう伸びの抑制は緩やかに行われます。
まとめ
今回の年金制度改正は、多様な働き方や生き方、家族構成に対応し、老後の生活の安定と所得保障の機能を強化することを目指しています。社会保険の加入対象の拡大により、より多くの人が年金や医療保険のメリットを享受できるようになります。また、在職老齢年金の見直しは、高齢者のさらなる活躍を後押しするものです。遺族年金の見直しは、男女間の公平性を高め、こどもへの保障を強化します。さらに、高所得者の保険料・年金額の適正化や、私的年金制度の拡充も盛り込まれており、現在の世代にとっても将来の世代にとっても、持続可能な年金制度の実現に向けた重要な一歩となります。


