2024年10月1日より取り扱いが厳格化された在留ミャンマー人への緊急避難措置

在留ミャンマー人への緊急避難措置の厳格化:濫用を防ぎ、制度の本来の目的へ

2024年10月1日より、日本に在留するミャンマー人に対する緊急避難措置の取り扱いが変更され、特に「技能実習」の在留資格を持つミャンマー人が「特定活動」へ在留資格を切り替える際の審査が厳格化されました。この変更は、人道的な措置が一部で誤用・濫用されていた状況を踏まえたものです。

緊急避難措置の背景と「特定活動」の導入

ミャンマーでは、2021年2月1日に国軍によるクーデターが発生し、情勢が不安定な状況にあります。これを受け、日本政府は人道的な配慮から、2021年5月28日以降、ミャンマーにおける情勢不安を理由に日本への在留を希望するミャンマー人に対し、緊急避難措置として在留や就労を認めてきました

この措置の具体例として、従来の在留資格活動が満了した者や、ミャンマー情勢により帰国が困難な者に対し、「特定活動」と呼ばれる在留資格が付与される場合があります。この「特定活動」の在留資格は、法的な滞在だけでなく、生活維持のための就労も許可されることがあります。

措置の誤用・濫用が問題に

しかし、この緊急避難措置は一部で誤用・濫用的に利用される事例が散見され、長らく問題視されてきました。

  • SNSでの情報拡散: 「申請すれば受理される」「特定活動に切り替えれば月40万稼げる」「特定活動に切り替えたおかげで新しいスマホが買えた」といった情報がSNSで拡散されたり、直接メッセージが届くケースがありました。中には来日前から「とにかく、日本に入国さえすれば特定活動に切り替えて稼げる」という情報もあり、技能実習生の失踪要因の一つとなっていました。
  • 失踪者の増加: 2023年には、ミャンマー人技能実習生の失踪者数が前年より約1,100人増の1,765人に達し、そのうち1,739人が失踪後にほとんど「特定活動」へ変更していました
  • 就労実態の乖離: 斡旋業者などの手引きにより「1年・就労可」の「特定活動」を取得し、技能実習の職種とは異なる都市部の外食産業やコンビニなどで、高賃金の仕事を掛け持ちする例が多く見受けられました。
  • 企業の利用: 受け入れ企業の中には、技能実習生制度や特定技能制度にかかる報告義務や費用がないため、あえて「特定活動」の在留資格を持つ人材を優先的に採用する企業や派遣会社も現れました。

このように、本来の人道的な目的から逸脱し、制度が「技能習得と帰国による母国での活用」という技能実習制度の本来の目的を達成する妨げとなる状況が生じていたのです。

2024年10月1日からの厳格化

このような状況を受け、出入国在留管理庁は2024年10月1日以降、緊急避難措置の取り扱いを変更し、審査を厳格化すると発表しました

最も重要な変更点は、技能実習を修了していないミャンマー人技能実習生が緊急避難措置に基づく「特定活動」への在留資格変更許可申請を希望する場合の取り扱いです

  • 変更許可の条件: 在留資格の変更が認められるのは、自己の責めに帰すべき事情によらずに技能実習の継続が困難となり、かつ監理団体などが実習先変更に係る必要な措置を講じたにもかかわらず、新たな実習先を確保できなかった場合に限られます。
  • 残余の在留期間がある場合: 技能実習を修了しておらず、残余の在留期間がある者については、在留資格の変更は認められません
  • 「説明書」の提出: 審査においては、監理団体等が実習先変更のための必要な措置を講じたかを確認するための資料として、監理団体等が作成する「説明書」の提出が求められます

これにより、「特定活動」への切り替えを安易な失踪の手段として利用することが困難になりました。

今後の展望

今回の見直しにより、来日後に安易に特定活動へ在留資格変更を目的として失踪する技能実習生の減少が見込まれ、安定的なミャンマーからの技能実習生受け入れが期待されています。

今回の措置は、ミャンマーの情勢不安という人道的な背景を考慮しつつも、制度の適切な運用と本来の目的達成を目指すものです。日本政府は、今後も情勢に応じて柔軟に対応を続けると予想されますが、同時に制度の濫用を防ぐための取り組みも継続されるでしょう。